WONDERLIZE INSIGHT
経営者と人事のための、採用・組織レター Vol.10
上手い応募書類は、もう差になりません。
AIの時代に、選考で見るべきもの。
ここ数年、人事の方々からESなどの応募書類に関する相談が一層増えてきました。
「書類で差がつかなくなった」
「以前は機能していた設問に、今は全員が綺麗に答えてくる」
「面接で深掘りしても、その先まで準備されている」
言い方は少しずつ違いますが、困りごとの芯は同じでした。
書き手の応募者は、文章が揃って上手くなりました。誤字がありません。構成が整っています。志望動機には事業内容が正確に織り込まれ、綺麗な表現が文章になっています。以前なら、この完成度の書類は目に留まりました。しかし、今は珍しくありません。理由は、皆さんご承知のとおりAIの存在です。
これを踏まえて、選考シーズンによく伺うようになった相談があります。
「AIで書いたものを、どうやって見抜くか」
お気持ちはよく分かります。整った言葉の先に本人の意志がどのようにあるのか確かめたい。ただ、このやり方は選考精度としてはあまりオススメできないと考えています。
理由は単純です。見抜く技術が上がれば、書く側のAI対策も上がります。選考側が一歩進めば、応募側も一歩進みます。この競争に終わりはありません。仮に見抜けたとして、手元に残るのは「この書類はAIで整えられている」という事実だけです。その人が自社で何を成せるのかは何も分かっていません。
もう一段、手前の話をします。そもそも・・・、応募書類は何を見るためのものだったのか。正直に申し上げると、文章力そのものを見ていたわけではないはずです。限られた時間で大量の応募に向き合うために、線引きをする必要がありました。その線引きが、たまたま文章の仕上がりと重なっていただけです。AIが行き渡ると、この線は消えます。
見抜く選考から、引き出す選考へ。
ここから先は、選考側が判断する視点を移す必要があります。体裁の良い文章が書けることは、もう差になりません。差になるのは、その場でしか起きないことです。準備してきた答えではなく、想定していなかった問いへの反応。整えた言葉ではなく、迷いながら言い直す時の言い方。一人で仕上げた成果ではなく、誰かと組んだ時の振る舞い。これらは、持ち帰って整えることができません。
とはいえ、その場で引き出すというのは・・・、言うのは簡単ですが実際にやるのは相当に難しいです。問いを一つ変えるだけで、応募者の緊張は上がりも下がりもします。場の作り方を誤れば、しっかりと見たかった方ほど当たり障りのない受け答えに戻ります。経験と準備の要る部分です。
一例を挙げます。ある会社向けに、面接の冒頭で自社に実際に起きた困りごとを一つ差し出すように提案しました。正解の用意されていない話です。応募者は、準備してきた話が使えません。その場で考えるしかありません。面接官が見るのは答えの中身ではなく、分からない話にどう向き合うかです。これだけで、書類では並んで見えた方々に差が出ました。
ただ・・・、この設問は会社ごとに作り直す必要があります。自社の現場にある具体性がなければ、面接官も自分の言葉で語れなくなってしまうからです。
一つ、添えておきたいことがあります。AIを使って書いてきた応募者を、AIを使用したことで下げる必要はありません。入社後の仕事でも、同じようにAIを使いますし、むしろ、これからの社会では使うことが標準です。むしろ、どう使ったのかを伺った方が実りがあります。何を任せ、どこを自分で決めたのか。その答えには、その人の仕事の進め方が表れます。
FROM THE FIELD
その場でしか、分からないこと
打ち手は、他にもあります。面接官が見る観点をそろえる。評価の理由を記録して次の面接官へ渡す。現場社員が応募者と話す時間を選考に組み込む。どれも、自社の事業と現場に合わせて作り込む必要があります。他社の型をそのまま使用すると、違和感が発生してしまうため注意が必要です。
応募書類の文章が揃ったことは、選考が難しくなったという話ではありません。採用戦略・採用戦術自体を変化させる必要があるということです。代用品で人の評価を測れていた時代が終わり、本来見たかったものを直接見に行く時代になった・・・。ということです。
何を問うか。どんな場を用意するか。どこで判断するか。これを設計できる人が社内に何人いるか。ここから先の採用力は、このような点を検討していける企業が強くなっていきます。
そしてその設計は人事の仕事です。選ぶ人から、選ぶ場をつくる人へとなることで、良い人材が集中的に採用・判断できる組織へと変化していきます。人事の役割が、改めて採用戦略に注目される時代の転換期だと考えています。
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