Wonderlize Insight Vol.08|組織は、制度で変わらない。

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経営者と人事のための、採用・組織レター Vol.08

組織は、制度で変わらない。

変化はいつも、一件の「例外」から始まる。

組織を変えようとする時、多くの会社はまず制度に手をつけます。評価を見直す。等級を組み替える。新しい仕組みを導入する。正しい手順です。私も制度の設計をご一緒することがあります。

それでも、こういう話をよく伺います。「制度は変えたのに、現場の空気は変わらない」人事の方が、いちばん悔しい思いをされている場面です。

なぜ、そうなるのか。それは、順番が逆になっているからだと考えています。制度が組織を変えるのではありません。先に誰かが今までと違う判断をして、それがとがめられなかった。その事実が積み重なった後で、制度がそれを追認するものです。制度は変化の起点ではなく、変化を記録したものとなります。

だからこそ私は、その会社の制度より先に別のものを見ます。前例のない案が持ち込まれた時、社内で何が起きているか。これは、制度の分厚さでは分かりません。

止まる箇所の大半は決まっています。稟議の三人目。部門をまたぐ瞬間。そして「前例はあるの?」と問われた時。この三つで、たいていの例外は前に進まなくなります。

ここで大事なこととして、止めた人は間違っていません。前例を確認するのは職務として正しいです。むしろ真面目な方ほど丁寧に確認します。誰かの怠慢ではなく、仕組みがそうさせているだけなのです。

もう一つ見落とされやすい点があります。通った例外が、その後どう扱われるかです。うまくいった例外の大抵は担当者の手柄話で終わります。「あの人だからできた」というよくある話です。社内には残りません。

すると、二人目が現れなくなります。組織が学べないのは、失敗を隠すからだけではありません。成功を判断として残していないからです。

制度化を急ぐことにも落とし穴があります。一件うまくいったからすぐ仕組みにする。熱があるうちに形にしたい気持ちはよく分かります。ただ一件だけを元に作った枠は、少し形の違う次の例外を通しにくくします。変化を広げるはずの仕組みが、変化を絞ることもあるのです。

制度は、変化の記録です。

FROM THE FIELD

例外を、どこで見るか

1
誰が止めたかではなく、どこで止まったかを見る。
人を追及すると、次から誰も持ち込まなくなります。見るのは工程です。稟議のどの段階か。どの部門の境目か。同じ箇所で何度も止まっているなら、それは個人ではなく設計の問題です。
2
通った例外は、成果ではなく“判断”を残す。
結果だけを共有しても、次の人は動けません。何を根拠に進めたのか。何を許容したのか。判断の中身が残って、はじめて二人目が出てきます。
3
制度にするのは、事例が揃ってから。
一件で仕組みにすると、その形だけが正解になります。似た判断がいくつか出てくるのを待ってから、共通点を制度にする。急がないことが、結果的に早く広がります。

制度をつくる仕事には、大きな意味があります。組織の考え方を形にして、次の世代へ引き継ぐ仕事です。ただ、その手前にもう一つできることがあります。

前例のない案が持ち込まれた時、それがどこまで進んだか。進んだ案が、その後どう扱われたか。そこを見ている人が社内に一人いるだけで、組織の動き方は変わります。

そしてその一人は、制度を最もよく知る人事の方が向いています。例外が通った回数は、そのまま組織の伸びしろになります。

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Wonderlize Insight | Vol.08
発行:ワンダーライズ株式会社(Wonderlize Inc.) / 著:宮川 卓也(代表取締役)
これまで500社以上の採用支援に関わり、組織改革のご提言も行ってまいりました。
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Wonderlize Insight Vol.07|新卒採用の本番は、夏が終わってから始まる。

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経営者と人事のための、採用・組織レター Vol.07

新卒採用の本番は、
夏が終わってから始まる。

学生の“いいな”には、賞味期限がある。

学生は夏に、たくさんの会社を回ります。夏季インターンシップや説明会で、何社もの現場を見ます。そして夏の終わりには、手元にいくつもの「いいな」が並びます。問題は、その「いいな」が秋まで残らないことです。

いま、夏季シーズンの企画に力を注いでいる会社は多いと思います。準備は終わり、あとはやり切るだけ。応募を集める。選ぶ。当日を無事に運ぶ。そこに集中するのは当然です。現場は本当に大変です。ただ、一つだけ先に言っておきたいことがあります。現代の新卒採用活動で重要になってくるのは夏が終わってからです。

Vol.6の記事で述べたとおり、学生の第一志望は「働く自分が見えた会社」で決まります。夏のインターンシップで心が動くのは、その瞬間があるからです。夏季シーズンが大事なのは間違いありません。ただ、動いた心には賞味期限があります。

好意は、貯金ではありません。放っておくと目減りします。学生が心を動かした会社は、貴社だけではありません。秋、そして冬シーズンに残るのは、いちばん良かった会社ではありません。思い出させてくれた会社です。

ここに、よくある落とし穴があります。夏の企画は、人も時間もお金もかかります。やり切った達成感で、現場はいったん止まります。悪気はありません。全力で走った証拠です。一方、学生から見るとそれは沈黙の時間となります。会社は「無事に終わった」と思います。学生は「連絡が来ない」と感じます。この温度差が、秋の離脱を生みます。

現代の新卒採用は、数を集める勝負から噛み合わせる勝負へと移りました。そして噛み合わせる作業は、夏には終わりません。一人ひとりの迷いや事情を聞く。こちらの現実も正直に伝える。それは秋から冬にかけての、地道な対話です。夏が出会いの季節なら、秋冬は対話の季節です。

夏の最中に、もう秋冬の採用活動を設計している会社があります。派手なことはしていません。誰に・いつ・何を渡すか。それを決めているだけです。“だけ”というのは語弊があるかもしれません。なぜなら、その単純な活動自体が心理的要素をとっても、マーケティング要素をとっても、最も難しく、当事者として頭をかかえやすいものとなるからです。

それでも、現実としてその差が冬に出ます。

夏は、出会っただけ。

FROM THE FIELD

夏のうちに、決めておきたいこと

1
誰に連絡するかを、夏のうちに決める。
手応えのあった学生を、記憶が新しいうちに書き留めておきます。夏が終わってから思い出そうとしても、顔と名前はもう混ざっています。秋の一通目の質は、ここで決まります。
2
秋の一通目は、案内ではなく「続き」にする。
全体向けの案内は、誰の記憶にも残りません。夏に交わした会話の続きから入る。学生は、自分を覚えていた会社を覚えています。
3
夏で、力を使い切らない。
秋冬こそ人と時間がいります。夏に全部を注ぎ込むと、本番で動けません。夏の予算と人手を組むときに、秋冬の分を先に取り分けておく。

夏をやり切るのは、簡単ではありません。その努力は、学生の中にちゃんと残ります。ただ、残ったものは放っておけば薄れます。だからこそ、夏が終わる前に秋の一手を決めておく。それだけで、夏に積み上げたものが生きます。

新卒採用は、夏に勝負が決まるものではありません。冬まで走り切って、はじめて結果が出ます。いまから設計を少し始めるだけで、春に迎える顔ぶれは変わります。

上記で書いたことをただやれば良いというわけではなく、ここで重要なのは“どのようにやるのか”です。

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Wonderlize Insight Vol.06|学生の第一志望は、「すごい会社」ではなく「働く自分が見えた会社」。

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経営者と人事のための、採用・組織レター Vol.06

学生の第一志望は、
「すごい会社」ではなく
「働く自分が見えた会社」。

盛大なインターンシップより、忘れられない一日。

自社の知名度に自信が持てず、良い学生は大企業に流れると半ば諦めている会社は多いです。規模で負けている。予算も限られている。派手なインターンシップも用意できない。だから採用でも勝ち目はない。そう思い込んでいる経営者や人事に何度も出会ってきました。でも500社以上の採用を見てきて、私はまったく逆の確信を持っています。学生が第一志望を決める理由は、会社の大きさではありません。

学生が本当に見ているのは、その会社で働く自分の姿がはっきり浮かぶかどうかです。どれだけ立派な説明会でも、自分ごとにならなければ記憶には残りません。反対に、たった一日の職場体験でも心が動けば第一志望に変わります。

私が見てきた中で、学生の志望度を決めた瞬間はいつも些細な場面でした。社員が本音でしくじり話を語った時。質問に、その場で真剣に考えて答えてくれた時。若手が遠慮なく自分の意見をぶつけている光景を見た時。派手さはありません。お金もかかっていません。けれど学生はそこで、「この中に自分がいる」と感じるのです。

これは規模の大きい会社にも、そのまま当てはまります。名前が知られているほど、応募は集まります。けれど「知っている」と「働く自分が見える」は別物です。名前だけで選ばれた会社は、もっと大きな名前が現れた瞬間に選ばれなくなります。どんな会社にも、この落とし穴は同じようにあります。

第一志望は、規模ではなく“働く自分が見えたか”で決まる。

FROM THE FIELD

現場で、何度も確かめてきたこと

1
集客力は、志望度とあまり関係ない。
何人集めたかより、一人の学生の心に何が残ったかが志望度を決めます。規模は追わなくていいのです。
2
見せるのではなく、輪の中に入れる。
綺麗に見せた会社より、輪の中に入れてくれた会社を学生は選びます。傍観させず一度でも当事者にする工夫が重要となります。
3
うまく話すより、正直に話す。
用意された言葉は見抜かれます。うまくいっていないことまで正直に話す会社に、学生は誠実さを感じます。

だからこそ、採用に自信のない会社にこそ勝ち筋があります。規模やブランドは、すぐには手に入りません。けれど「働く自分が見える一日」は、今からでもつくれます。そしてその一日は、大企業の看板よりも学生の心に長く残ります。

採用は持っているものの勝負ではありません。どんな一日を用意できるかの勝負です。その設計を見直すことが、欲しかった学生を振り向かせる最初の一歩になります。

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Wonderlize Insight Vol.05|「採用がうまくいかない」の大半は、採用の外で決まっている。

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経営者と人事のための、採用・組織レター Vol.05

「採用がうまくいかない」の大半は、
採用の外で決まっている。

採用の悩みは、組織を読み解く“手がかり”になる。

工場のラインは、一番遅い工程の速度でしか流れません。手前をどれだけ速く工夫をしても、最も遅い工程の区間が詰まっていれば全体は1ミリも速くならない。むしろ詰まっている点の手前部分に溜まっていくだけです。製造現場では常識となるこの話が、採用になると忘れられます。

「応募が集まらない」「いい人が採れない」「すぐ辞める」。多くの会社は、これを採用活動の中で模索します。媒体を変える。面接を磨く。選考者を増やす。どれも正しい。でも直らないことがある。ボトルネックが採用の外にあることが多いからです。

経営学に「制約条件の理論」という考え方があります。要点をひとつに絞ると、“全体の成果は、一番細いところで決まる”ということです。そして一番細い場所はたいてい探しているところにありません。

採用も同じです。数字が悪いと、原因は採用活動の中にあるように見える。でも本当の詰まりは、その外にあることが多いのです。

内定辞退が続く会社がありました。選考の仕方を改善しても条件提示の見せ方を変えても、辞退は止まらない。詰まっていた箇所は選考フェーズそのものではなく、「入社後に何が待っているか」が見えないことでした。配属先・育て方・任される仕事。どれも輪郭がぼやけているケースは非常に多いです。人は、見えない場所には飛び込めません。

企業は、見せているつもり。伝えているつもり。でも、大事なのは受け側が見えているか。理解しているか。

早期離職が多い会社もありました。採用基準を厳しくしても、辞める人は減らない。詰まっていた箇所は基準ではなく、受け入れる現場に余力がなかったことでした。採れても、育てる手が空いていない。入り口を狭めても、出口の穴が開いたままで“人材保有”としては溜まりません。

採用活動は、組織開発において重要な機能のひとつです。製造工場のように、どこかの工程が詰まればその手前に溜まって数字に出る。辞退・離職・応募の少なさ。多くはその溜まっている箇所を検知するためのサインです。数字だけを追うのは、毎年変動する場当たり的な要素に一喜一憂するのに似ています。見るべきは、詰まっている工程のほうです。

だからこそ、採用を立て直すとき、私はまず採用以外の組織状況を気にかけることを意識しています。配属後の育成。評価と処遇。現場の余力。社内の事情や企業文化。自社の魅力が言語化されているか。経営と現場が、同じ絵を見ているか。人の集まりで組織を構築する以上、“採用”は各所の詰まりが最後に噴き出す場所です。入り口だけをいじっても動きません。

ここに、ひとつ厄介な点があります。自社のボトルネックは中にいると見えにくい。毎日その工場で働く人ほど、複雑な工程すら“普通”に見えてしまう。慣れは、特殊な条件(状況)も、標準であると錯覚してしまいます。だからこそ、外からの目がいるのです。

ボトルネックは、たいてい探している場所にない。

採用に手を尽くしても手応えがないなら。問い直すべき場所は、採用活動の中ではないのかもしれません。少し目線を広げれば、ヒントが見えてきます。貴社の紐解くべき箇所はどこにありますか。

FROM THE FIELD

採用の“外”を、どこから疑うか

1
入り口でなく、“出口”から数える。
応募数より、内定辞退と早期離職。出口の漏れは、組織のどこが詰まっているかを正直に教えてくれます。桶を大きくする前に、まず穴を数える。
2
現場に、“育てる余力”はあるか。
採れても、受け入れ側が手一杯だと人は育ちません。採用と現場は、別々の問題ではありません。採る前に、現場の状況を正しく理解する。
3
自社の魅力は、“言葉”になっているか。
人事や面接官が自社を語れないのは個人の問題でなく、会社が魅力を言語化できていないからです。採用活動は、自社の経営戦略が一般的に賞賛されるか否かの試験のようなものでもあります。

採用活動がうまくいかないとき、採用担当だけを責めても解決はしません。その原因はもっと深いところにあることが多く、その“詰まり”ほど、外の目のほうがよく見えます。

一度、“外側”からの目線で自社の採用活動を見てみてください。そして、ネックポイントが見えたとき、会社への改善提案はとても強いインパクトを持ちます。それは採用強化・組織強化へと発展し、経営者が求めている変革へと繋がるはずです。

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Wonderlize Insight Vol.04|“辞めてほしい人”は残り、“辞めてほしくない人”が去る理由。

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経営者と人事のための、採用・組織レター Vol.04

“辞めてほしい人”は残り、
“辞めてほしくない人”が去る理由。

離職率という数字が隠しているもの。

退職率はよくできた指標です。数えやすい。会議でも報告対象となりやすい。ただ一つ欠点があります。“誰が辞めたか”を教えてくれない。

辞めた一人と残った一人。名簿の上ではどちらも同じ「1」です。でも中身は正反対のことがあります。そして多くの会社で去っていくのは“辞めてほしくない人”のほうです。

先に言っておきます。定着に手を打つのは正しいことです。ところが“辞めさせない”ための工夫がくせ者です。いつのまにか“辞めてほしい人”に優しい会社をつくります。今回はその居心地のいい落とし穴の話です。

なぜ良い人から抜けるのか・・・。こんな部屋を想像してみてください。全員が快適に過ごせるよう室温を平均ぴったりに合わせた部屋。寒がりにも暑がりにも角が立たない。適温です。でも、いちばん熱を持つ人には少し寒い。組織の“平均への最適化”はこれとよく似ています。

定着施策の多くは「全員に等しく安心を提供する」という形をとります。安定・平等・和・・・。これらはとても聞き心地が良い上に、大事なことです。一方で、意欲の高い人が欲しいのは安心ではありません。意欲の高い人は、成長と裁量と手応えが欲しく、均一な安心は彼らには“停滞”に見えてしまいます。そして「何も変わらない。いつもこうだ。」と心のどこかで思ってしまう人もいると思います。逆に現状維持を望む人には、この上なく心地いい。だから残る。こうして部屋の温度は少しずつ“冷めた人”に寄っていきます。

とどめは評価です。角を立てないよう全員に同じだけ(同じように)報いる。一見公平です。でも実際は、いちばん働いた(価値をつくった)人だけが割を食う。経済学に「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉があります。組織版のグレシャムの法則のようなものです。そして良貨は財布の中でいちばん先に姿を消します。

ここで最初の話に戻ります。体重計は体重を教えてくれます。でもそれが筋肉か脂肪かは教えてくれない。退職率も同じです。数は見えても中身は見えない。退職率の数字が下がって喜ぶ裏で、もしかすると組織の“密度”は薄まっているかもしれません。

「辞めさせない」を目的にすると打ち手は引き止めに偏ります。慰留・手当・異動・・・など。しかし、残って欲しい人が去る理由はたいてい待遇ではありません。「ここにいても伸びない」。その一言のほうがどんな慰留より重いのです。要は、ステージチェンジを検討し、引っ越しをするようなものです。

「辞めない」は、健全さの証ではない。

目指すのは誰も辞めない会社ではありません。辞めてほしくない人が「まだここにいたい」と思う会社です。似ているようで、この二つはまるで違います。

FROM THE FIELD

定着を、“質”で見る

1
数えるのは“人数”、見るのは“顔ぶれ”。
退職率の増減より、辞めた人の顔ぶれを見ます。ハイパフォーマーが抜けたなら、制度が平均に寄りすぎたサインです。ダメージの大きな離職の一件は、平穏な定着の百件より雄弁です。
2
評価は、平等でなく公平に。
全員に同じ配分では、最も貢献した人ほど報われません。差をつける勇気が、優秀な人の“残る理由”になります。横並びの安心は、あとで高い代償として出てきやすいです。
3
引き止めるのは、人でなく“理由”。
慰留の前に、辞める理由を先に潰します。成長の停滞。裁量の無さ。報われない感覚。辞表が出てからでは遅いのです。理由は、積極的に潰しにいくべきです。

まず“辞めない数”の裏側を一度のぞいてみてください。そこに映るのは一つの問いです。この会社は本当は誰にとって居心地がいいのか。

辞めてほしくない人が残る組織は、放っておくだけではできません。でもつくれます。その伸びしろには、まだ考えられる策がいくつもあるはずです。

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Wonderlize Insight Vol.03|面接官の質が、応募者の質を決めている。

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経営者と人事のための、採用・組織レター Vol.03

面接官の質が、
応募者の質を決めている。

「いい人が来ない」の、もう半分の話。

「御社の面接、応募者からどう見られていると思いますか」

ある大手企業の採用責任者に、私はそう尋ねたことがあります。その方は少し考えて、こう答えました。

「考えたこともなかったです」

面接は“こちらが選ぶ場”だと思っているかたが大半です。でも応募者もまた、面接官を通して会社を値踏みしている。その視点が抜け落ちていることは意外と多いのです。

ある会社で、優秀な学生が最終面接まで進んで辞退しました。理由を聞くとこう言ったそうです。「面接官の方が、自社の魅力をひとことも語れませんでした」スキルも実績も申し分ない学生でした。彼は面接官を見て会社を見切ったのです。

これは珍しい話ではありません。「いい人が来ない」と嘆く会社の何割かは、実は「いい人に去られている」。そして、その引き金を引いているのは面接の“こちら側”であることが意外に多いのです。

考えてみれば当たり前の話です。応募者にとって面接官は、面接当日に会社のすべてを映す存在です。履歴書に目も通さず「今日は誰の面接だったかな」と始まる面接。興味なさそうに頷き時計を気にする面接官。逆質問に自社の言葉で答えられない面接官。優秀な人ほど、その数十分で会社の本気度を測り志望順位を下げます。

さらに厄介なのは、面接官の質が応募者の“質”そのものを左右することです。こわばった応募者に、良い問いを一つ投げるだけで目の色が変わる。逆に、圧の強い面接官の前では優秀な人ほど当たり障りのない答えに逃げます。「この応募者は大したことない」と感じたとき、その半分は引き出せなかった側の問題かもしれません。

もちろん、面接官を責めたいわけではありません。多くの面接官は、本業を抱えたまま片手間で面接に駆り出されています。準備の時間もなく、評価の物差しも渡されないまま現場に放り込まれる。これは個人の資質ではなく、仕組みの問題です。

採用の世界には、面接の評価は驚くほど当てにならないという古い指摘があります。第一印象や、その日の気分に判断が大きく引きずられてしまう。それなのに多くの会社は面接官を“訓練しない”。面接官として抜擢したことで、採用として人を選ぶ技術は備わっているとなぜか信じられているのです。

そして数年後、同じ会社がよくこのように言います。「最近、いい人が採れなくてね」それは、母集団の問題ではないのかもしれません。鏡にうつる自分の顔を見て「最近うつりが悪い」と言っているのに少し似ています。

面接は、鏡です。

Vol.1の記事で『採用は、鏡です。』と語っていますが、面接も同じです。

会社の本気が応募者の本気を引き出します。こちらが手を抜けば相手も見切る。こちらが真剣なら相手も応える。面接官の質は、そのまま会社の“採用力”の質なのです。

FROM THE FIELD

面接の“こちら側”を見直す

1
面接官の“人を見抜く力”は、生まれつきではなく“育てる”もの。
良い面接は技術です。問いの立て方、聞く姿勢、自社の語り方。研修や振り返りで確実に伸びます。属人任せをやめるだけで、通過後の辞退は目に見えて減っていきます。
2
逆質問は、会社が試されている時間。
「何か質問はありますか」への答え方こそ、応募者が最も会社を見ている瞬間です。ここで自社を自分の言葉で語れるか。面接官には、事前に“語れる準備”をしていただきたい(できるようにセッティングすべき)ところです。
3
面接の印象は、応募者にも聞いてみる。
辞退した人や見送った人に、面接の印象をそっと尋ねてみる。自社の面接がどう見えているか、いちばん正直な反応が重要になります。答えにくい真実ほど、伸びしろの在り処を教えてくれます。

この記事を通じて、面接を“される側”の視点で一度眺めていただけたら幸いです。

人を選ぶ技術を磨くことは、そのまま“選ばれる会社”になることでもあります。それが巡り巡って、採用の景色を変えていくと信じています。

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Wonderlize Insight Vol.02|「学べるから」「挑戦したいから」その志望動機、本当に大丈夫ですか・・・?

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経営者と人事のための、採用・組織レター Vol.02

「学べるから」「挑戦したいから」
その志望動機、
本当に大丈夫ですか・・・?

会社は、学校ではない。

「御社で業界最先端の技術が学べると思っています!」

面接で目を輝かせて、まっすぐにそう話す学生がいます。別の子はこう続けます。

「御社で新規事業の立ち上げにチャレンジしたいんです!」

熱意は本物です。きっと嘘ではない。だから多くの面接官は好印象を抱きます。「向上心があるな」と。

ここで、少しだけ立ち止まってほしいのです。その志望動機・・・本当に大丈夫でしょうか。

先にはっきりさせておきます。学ぶ意欲も、挑戦したい気持ちも、それ自体は尊い。否定する気はまったくありません。ただ、採用を長く見てきた人ほど、この手の動機にかすかな違和感を覚えるのではないでしょうか。うまく言葉にできないけれど・・・、なんとなく引っかかる。その正体を少し解きほぐしてみます。

そもそも・・・、「学びたい」「挑戦したい」、それを叶える場所なら世の中にいくらでもあります。講習・習い事・ビジネススクール・留学・・・などなど。ただ、そこには一つの共通点がある。学ぶ側がお金を“払う”のです。成長を買いに行く場所では、私たちは月謝を払う。それが筋というものです。

ところが、会社は逆です。働けば給料を“もらえる”。同じ「学び」「挑戦」のはずなのに、なぜ片方は払い、片方はもらえるのか。この差にこそ、仕事の本質が隠れています。

仕事とは、つきつめれば誰かの課題を解決することです。世の中の困りごとを引き受けて解決する。その対価としてお金を受け取る。働く人の存在価値は、「何を解決したのか」にある。学びの場でも自己実現の場でもなく、まず課題解決の場なのです。

ここまで来ると、最初の違和感の正体が見えてきます。「御社で学べるから」「御社で挑戦したいから」。この言葉、主語がぜんぶ“自分”に向いている。会社を、自分が成長するための“手段”として見ているのです。矢印が内側を向いている。

本来、聞きたいのは、逆向きの矢印です。「自分は御社で、誰の、どんな課題を解決できるのか」。同じ熱量でも、矢印が外を向いている人は強い。一緒に働きたくなる。

もちろん、仕事を続けていればふと振り返ったときに「あれは学びだった」と思える瞬間や、挑戦すべきタイミングも巡ってきます。でも、それは結果であって目的ではない。順番が逆になってはいけないのです。

順番が逆になると何が起きるか。成長を“目的”にして入った人は、成長が止まったと感じた瞬間に去っていきます。一方、課題解決を目的にした人は、課題がある限りそこに留まる理由がある。そして会社(仕事)というのは、ありがたいことに課題が尽きることがありません。

これは特定の誰かを責める話ではありません。むしろ、まじめで素直な人ほど「成長させてくれる会社」を探そうとする。“学ばせてもらう”という発想が、いつのまにか身についている。だからこそ、見極める側がその違いに気づいていないといけないのです。

会社は、学校ではない。

学ぶ意欲を持った人は宝です。ただ、その矢印の向きだけは入口で確かめておきたい。「学べるから」を、ただの熱意として受け取るか、一度立ち止まって問い直すか。その小さな差が、組織の数年後を静かに分けていきます。

FROM THE FIELD

面接で、ここを見てみる

1
「成長させてほしい」は、裏返せば“受け身”。
成長を提供されるのを待つ姿勢は、入社後も“指示待ち”として顔を出しやすいものです。自ら課題を取りにいく人かどうか。志望動機の熱量だけで判断せず、別の角度の質問で確かめたいところです。
2
志望動機は、「主語」を聞けば見えてくる。
「なぜ当社か」への答えが、“自分が得られるもの”に向いているか、“自分が果たせること”に向いているか。たった一つのこの問いで、その人の仕事観の輪郭が驚くほどはっきり浮かび上がります。
3
“内向きの矢印”は、入社後に向きを変えられる。
入口で矢印が自分に向いていても、課題を解決できた手応えを早い段階で味わえば、関心は自然と外へ向きます。採って終わりにせず、最初の数ヶ月の“任せ方”を設計する。そこに、組織(チーム)の腕の見せどころがあります。
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Wonderlize Insight Vol.01|全員が賢くなると、会社は弱くなる。

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経営者と人事のための、採用・組織レター Vol.01

全員が賢くなると、
会社は弱くなる。

採用は、会社の未来を映す鏡である。

「現場からは、毎月のように声が上がってくるんです。

『もっと変化を起こせる人材を』『部門を引っ張れる人を採ってくれ』と。」

ある大手企業の人事部長が、打ち明けてくれたことがあります。

各部門からのオーダーは、積み上がる一方でした。だからこそ、優秀な人をたくさん採ってきた。学歴も、論理性も、実績も、申し分ない。現場の要望に、誠実に応えてきたつもりだった。

それなのに・・・、会社(部門)は、思ったほど変わらない。

「採っても、採っても、変化が起きないんです。これはもう、私の責任なんでしょうか」

人事のトップとして、その方は本気で悩んでいました。

最初は、私も一緒に首をひねりました。でも、いくつもの会社を見るうちに、思い当たったのです。これは事故ではなく・・・優秀さを突き詰めた会社が、わりと高い確率で踏む“地雷”であると気付きました。

社員数千人を抱え、業界では誰もが名を知る企業でした。その会社は数年をかけて、絵に描いたような“粒ぞろい”の組織になりました。大きな失敗はありません。むしろ、失敗が一つもない。そして同じだけ、大きな成功も、一つもなかったのです。

会議に何度か同席させてもらって、理由がわかった気がしました。誰かが新しい案を出すと、すかさず賢い指摘が返ってくる。「リスクがあります」「前例がありません」「再現性が見えません」。どれも、正しい。一つも間違っていない。

・・・でも、正論ばかりが整然と並ぶ会議室は、よく整備された駐車場に似ています。きれいだけれど、誰も、どこへも走り出さない。こうして、誰も新しいことを始めなくなる。

逆に、伸びている会社にお邪魔すると、少し違う声が聞こえます。会議のどこかで、誰かがぼそっと言うのです。「うまく言えないんですけど・・・なんか、面白くないですか?これ」普通なら一蹴される、ふわっとした提案。ところが、その“よくわからない一言”から、次の柱になる出来事や施策が生まれていたりする。

長く見てきて、人にはどうやら二種類いるな・・・と感じています。正解を出す人と、問いを立てる人です。正解を出す人は、いまある事業(製品・施策・サービス・業務)を磨き上げる。問いを立てる人は、まだ無い事業(製品・施策・サービス・業務)を引き寄せる。

そして多くの会社は前者ばかりを集めます。理由は単純で、評価しやすいからです。問いを立てる人は、面接では扱いにくい。点数が、つけにくいのです。でも考えてみてください。正解を出すだけなら、いまや手元のAIが数秒でやってのける時代です。希少になったのは、もう一方となる“まだ誰も問うていないことを、問える人”のほうなのです。

経営学には昔から「優良企業ほど、破壊的な変化に弱い」という有名な指摘があります。理屈としては知っていましたが、現場に立つと、これが肌感覚として腑に落ちる。優秀な人ほど、リスクを正確に見積もれてしまう。だからこそ、賢い人が増えるほど、危ない橋を渡る人は、静かに減っていくのです。

これは、採用そのものにも同じような現象として発生します。「主体性のある人が欲しい」と、どの会社もおっしゃる。ところがいざ、自社に疑問をぶつけてくる学生が現れると、大抵は少し引いてしまう。「挑戦できる人が欲しい」と言いながら、挑戦的な人を、そっと見送ってしまう。「変化を起こす尖った人が欲しい」と思いながら、社風と合わないという判断をしてしまう。

そして数年後、同社が、こう言います。「最近の若手は、主体性がなくてね」・・・これはもう、人材の問題ではありません。鏡の前で「最近、鏡うつりが悪い」と嘆いているようなものです。

採用は、学生を選ぶ場のように見えて、会社自身が値踏みされている場でもあります。どんな人を選び、どんな人を見送るか。その一つひとつが積み重なって、組織の体質になる。そして体質は、戦略よりも強い力で、会社の未来を決めていきます。

もし今、「挑戦が足りない」「新しい発想が出てこない」と感じているのなら、見直すべきは、採用基準だけではないのかもしれません。もちろん、採用基準は非常に重要です。まさに見直すべき時代です。それと同時に、挑戦する人が、ちゃんと活躍できる場所になっているか。問いを立てる人が、煙たがられずにいられる組織か。ここを同時に問うべきで、今までと同じことを繰り返すことへの価値は、急激に低下していると考えます。

採用は、鏡です。

集まってくる人を見れば、その会社のこれからが、少しだけ先に見えてしまう。こわい話でもありますが・・・裏を返せば、採用を変えれば、未来も変えられる、ということでもあります。

FROM THE FIELD

現場で、何度も見てきたこと

1
面接が上手い人と、活躍する人は、ときどき別人。
面接で評価されるのは、「その場の受け答えの上手さ」です。一方、事業を前に進めるのは、また別の部分。通過率の高い人を集めても、それだけで組織が動き出すとは限りません。面接巧者と名プレーヤーは、必ずしも一致しないのです。
2
「挑戦できる人が欲しい」会社ほど、保守的に落としている。
挑戦的な発言は、面接の場では「生意気」「カルチャーに合わない」と読み替えられがちです。求める人物像と、実際の合否基準。この二つがずれていないか、一度つき合わせてみる価値があります。
3
基準と文化がずれると、人は採れても、続かない。
「主体性のある人」を採っても、主体性が歓迎されない職場であれば、その人はやがて静かに去っていきます。採れない悩みよりも、活かせない悩みのほうが、根は深いものです。

この記事を通じて、何かに気付き、感じていただけることがあれば幸いです。

また、それを次のアクションへと変えていただければ、飛躍的な業務の向上・会社の変化・日本社会への影響力へと繋がっていかれることを信じております。

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Wonderlize Insight | Vol.01
発行:ワンダーライズ株式会社(Wonderlize Inc.) / 著:宮川 卓也(代表取締役)
これまで500社以上の採用支援に関わり、組織改革のご提言も行ってまいりました。
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