WONDERLIZE INSIGHT
経営者と人事のための、採用・組織レター Vol.04
“辞めてほしい人”は残り、
“辞めてほしくない人”が去る理由。
離職率という数字が隠しているもの。
退職率はよくできた指標です。数えやすい。会議でも報告対象となりやすい。ただ一つ欠点があります。“誰が辞めたか”を教えてくれない。
辞めた一人と残った一人。名簿の上ではどちらも同じ「1」です。でも中身は正反対のことがあります。そして多くの会社で去っていくのは“辞めてほしくない人”のほうです。
先に言っておきます。定着に手を打つのは正しいことです。ところが“辞めさせない”ための工夫がくせ者です。いつのまにか“辞めてほしい人”に優しい会社をつくります。今回はその居心地のいい落とし穴の話です。
なぜ良い人から抜けるのか・・・。こんな部屋を想像してみてください。全員が快適に過ごせるよう室温を平均ぴったりに合わせた部屋。寒がりにも暑がりにも角が立たない。適温です。でも、いちばん熱を持つ人には少し寒い。組織の“平均への最適化”はこれとよく似ています。
定着施策の多くは「全員に等しく安心を提供する」という形をとります。安定・平等・和・・・。これらはとても聞き心地が良い上に、大事なことです。一方で、意欲の高い人が欲しいのは安心ではありません。意欲の高い人は、成長と裁量と手応えが欲しく、均一な安心は彼らには“停滞”に見えてしまいます。そして「何も変わらない。いつもこうだ。」と心のどこかで思ってしまう人もいると思います。逆に現状維持を望む人には、この上なく心地いい。だから残る。こうして部屋の温度は少しずつ“冷めた人”に寄っていきます。
とどめは評価です。角を立てないよう全員に同じだけ(同じように)報いる。一見公平です。でも実際は、いちばん働いた(価値をつくった)人だけが割を食う。経済学に「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉があります。組織版のグレシャムの法則のようなものです。そして良貨は財布の中でいちばん先に姿を消します。
ここで最初の話に戻ります。体重計は体重を教えてくれます。でもそれが筋肉か脂肪かは教えてくれない。退職率も同じです。数は見えても中身は見えない。退職率の数字が下がって喜ぶ裏で、もしかすると組織の“密度”は薄まっているかもしれません。
「辞めさせない」を目的にすると打ち手は引き止めに偏ります。慰留・手当・異動・・・など。しかし、残って欲しい人が去る理由はたいてい待遇ではありません。「ここにいても伸びない」。その一言のほうがどんな慰留より重いのです。要は、ステージチェンジを検討し、引っ越しをするようなものです。
「辞めない」は、健全さの証ではない。
目指すのは誰も辞めない会社ではありません。辞めてほしくない人が「まだここにいたい」と思う会社です。似ているようで、この二つはまるで違います。
FROM THE FIELD
定着を、“質”で見る
まず“辞めない数”の裏側を一度のぞいてみてください。そこに映るのは一つの問いです。この会社は本当は誰にとって居心地がいいのか。
辞めてほしくない人が残る組織は、放っておくだけではできません。でもつくれます。その伸びしろには、まだ考えられる策がいくつもあるはずです。
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